第9章 第25章 決戦と喪失 1812~1813ページ
2人に言われた通り唇を湿らせるために猪口に口を近付けるも、強い酒なのか思いの外匂いが強く緊張が増していく。
(お酒……匂いだけで酔ってしまいそうです)
それでもお狐様からの加護をいただくためにどうにか猪口に唇を付けて僅かに湿らせそれを離す。
「お酒は思っていたよりも刺激的ですね!お狐様、ありがとうございます。杏寿郎君、お待たせしました!お次どうぞ」
「君が成人して酒を飲む時は果実水で薄めるといいかもしれんな!では俺もいただこう!」
隣りでお狐様を撫でながら待っていた杏寿郎が猪口を受け取るのを確認すると、は上唇を僅かに濡らす酒を無意識にペロと舐めとった。
(わわっ……思わず舐めてしまいました!凄く不思議な味です!杏寿郎君は笑顔で飲んでいらっしゃいますし……成人すれば美味しく……感じ……んん?)
杏寿郎が中身を飲み干した猪口をお狐様に返す頃にへ視線を戻すと、頬を赤らめて瞼をトロンと半分閉じながら難しい顔をしていた。
そんなへ杏寿郎は笑みを浮かべながらいそいそと水を用意して口元へ運んでやる。
「、これを飲んでおきなさい」
「ん……はい」
杏寿郎が用意した水を飲み干すと表情は和らぎ、その代わりにフワフワとした表情へと変化した。