第9章 第25章 決戦と喪失 1812~1813ページ
薄紅色に染まった頬を撫で今にも眠ってしまいそうなの体を笑顔で抱き上げ、足の間に座らせて胸元に持たれ掛けさせてやる。
「少し眠るといい」
「……ーーーぅん」
小さな返事をした一瞬後には夢の世界へと旅立ってしまった。
「お嬢さん酔っちゃったの?」
先ほどから上手く物事が進まないお狐様は再び耳をペタンと頭に張り付けてしょんぼりしてしまったので、杏寿郎は心配ないというようにフワフワな頭を撫でた。
「酒に酔ったと言うより、酒を飲んでしまったという事実から酔った感じになったのだろう。は何をするのも初めてのことが多いので、俺ですら予想だにしない反応を示してくれる。お狐様は落ち込まず愛でてやってくれると助かる」
なんと思い込みで酔った風になってしまったらしい。
その証拠とでも言うべきか、静かに寝息を立てているの頬の赤みはなくなり……ただ気持ちよさそうに眠っているだけだ。
「よかった!お兄さんは優しいね。本当にお嬢さんのことが大切なんだなって伝わる。お嬢さんもお兄さんのことを心から信頼してるからすぐに寝ちゃったんだろうね」
気持ちを持ち直したお狐様は元気のなかった尻尾を機嫌よく左右に揺らし、自分も杏寿郎の足元に移動して2人の体温を感じられる所に腰を下ろした。