第9章 第25章 決戦と喪失 1812~1813ページ
「何歳まで……と聞くわけではありませんから。この際スッキリさせたいのです。聞きたいというのは私のワガママなので、杏寿郎君がお辛ければやめておきます」
お狐様を含め2人の遣り取りに誰も口を挟めないでいた。
そもそも寿命を失っていると知っているのはこの場では、しのぶ、天元、実弥のみ。
柱同士であっても軽々しく話題にあげられる内容でもないので誰もが口に出さずにいた。
と杏寿郎にいたっては、聞かれれば答えようという心積りでいたので……やはり他の柱たちに自ら話すことはしなかった。
はあっけらかんとしているが、杏寿郎はどうしても口に出したくなかったのだろう。失いたくない人の命に関わることだから……
「いや、君が望むのならば聞いておこう。よし!お狐様、ぜひ聞かせてくれないか?俺の妻が何年奪われたのかを」
気持ちを切り替え真剣な眼差しをお狐様に向ける杏寿郎の胸の中で、その人が鼓動を速めてしまったことに罪悪感を感じながらもも目の前にいるお狐様に真剣な眼差しを向けた。
「……そこまで正確には分からないけど、8年ちょっとかな。なんかゴメンよ、この世の理に反して寿命縮めてる人を初めて見たから……」
シュンと項垂れてしまったお狐様と反しては嬉しそうにお狐様を高い高いした後、片腕でそっと胸に抱きすくめて杏寿郎の背中にもう片方の腕を回した。