第9章 第25章 決戦と喪失 1812~1813ページ
その声を尻尾をパタパタと振ることで制し、杏寿郎の温かな腕に抱きすくめられるを見つめ続ける。
話すまでそれが続くと感じ取ったは、悲しみを一切感じさせない笑顔で答えた。
「杏寿郎君と出会って先の人生を共に歩み、こうして皆さんと幸せな時間を過ごすために使いました。私が有していた力が私の命を縮めましたが、それ以上に幸せな時間を与えてくれたのです。その力はもうなくしたので、お狐様にお見せできず……申し訳ございません。ところでお狐様?」
膝の上にちょこんと鎮座しているお狐様を両手で抱きかかえ目線を合わせると、は笑みを更に深めて首をコテンと傾げる。
「私の寿命、正確には何年なくなりましたか?何年も……と仰られたのならば正確な年数をご存知なのでは?」
しのぶからは概算で10年と教えられた。
しかしやはり概算であって正確な年数ではない。
だからと言って正確な年数を知ろうとする者は多くはないだろう……それが確実に決定されるのだから。
「……」
これから共に長い年月を過ごしていく杏寿郎は心配気にの顔を覗き込むも、そこにあったのは変わらず笑みだけだった。