第8章 第26章 月と太陽(1874~1878ページ)
黙っちゃいない杏寿郎の姿を想像したのか……門下生がビクリと肩を揺らしたと同時に杏寿郎が奥義の構えを取り、は実弥でさえ見たことのない技の構えを取った。
「炎の呼吸 奥義 玖ノ型 煉獄」
「紫炎の呼吸 奥義 玖ノ型 雪月風火」
舞の域を超えた杏寿郎の奥義を、は何とも美しい炎の残影を辺りに舞い散らせながら負けず劣らずの威力で迎え撃った。
「なっ……んだ?!道場吹っ飛ばす気かァ?」
驚き呆れながらもの放った初めて見る奥義の炎の残影はやはり美しく、それ以上の言葉が出てこなかった。
微細で霧のように舞う橙の炎はがかつて体内に宿していた治癒の力を彷彿させ、それ自体に治癒の効力がないと分かっていても、この場の誰かの傷を優しく癒すのではと思えるほどである。
「フフッ、杏寿郎君。実弥お兄さんを驚かせることに成功しましたね。最終決戦に間に合わなかった奥義、頑張ってものにした甲斐があります」
嬉しそうにふわりとした笑みを浮かべるの頭を撫でながら、杏寿郎は満面の笑みで頷き実弥へと向き直った。
「どうだ!の奥義は綺麗だっただろう?威力も申し分なく、決戦に間に合わなかったのが悔やまれる技だ!後世に伝えるならば型を全て残したいと言ったのでな。他ならぬの願いを叶えるために、日々2人で試行錯誤して編み出したんだ!」