第7章 ※ 第25章 決戦と喪失 1812~1813ページ
何か目の前のとんでもなく強い2人……どちらか1人だけでも隙を作れないか。
そんなことを考えていた男の目に入ったのは2人の腰元で揺れる揃いの帯飾り。
火事場の馬鹿力と言うのか……男は強いと言えど杏寿郎より力量の劣るに狙いを定め手を伸ばし帯飾りに触れた……と認識した瞬間、今までの動きより遥かに素早い動きで躱され目に映し出される人物が入れ替わった。
「この子からは何も奪わせない。君たちがこの子にしようとしていたこと、笑顔を翳らせたこと……あまつさえ帯飾りまで奪おうとしたこと。どう責任を取ってもらおうか?鬼であれば頸を斬っていたのだが……どう責任を取る?」
男たちはもちろんだが背に庇われたでさえ、杏寿郎の静かであっても強い声音は本気で苛立ちを感じているのだと伝わる。
(手荒なことは避けたかったですが……杏寿郎君の笑顔を取り戻す事が最重要事項です!)
そう意気込み1度1人頷くと、杏寿郎の背から顔を出して男たちの状況を確認する。
現在はの帯飾りを掠め取ろうとした男が他の2人より僅かに前に出ており、全員が杏寿郎の怒気に体を震わせている状態だ。
(今なら背後に回って頸椎を叩けば……)
「もうはこの者たちに触れなくていい。と言うより……触れないでもらえると俺の心の安寧が保たれる」