第7章 ※ 第25章 決戦と喪失 1812~1813ページ
構えだけ見ても素人ではないと嫌でもわかるくらい木の棒を握る杏寿郎には一切の隙がなく、適うとは到底思えない。
それならばと1人が背後にいるを……と、ついに物騒で鋭く光る刃物を懐から取りだし勢いよく体の向きを変えた。
はずだった。
刃物を取りだした時点で有利になったと思ったのに、そんな考えは一瞬で弾け飛んだ。
カンッと乾いた音が男の耳に届いた時には手にあったはずの刃物は高く宙を舞い、杏寿郎を飛び越えて暗闇へと消えていってしまった。
「私を捕まえて何をされたいのか存じませんが、私は杏寿郎君以外眼中にございません。これ以上私も手荒なことをしたくないので、去っていただけませんか?」
やはりこちらも木の棒を構える姿に一切の隙もない。
男7人で本気で殴りかかって行ったのに、杏寿郎どころか華奢な少女の髪の毛1本に掠ることすら出来なかった。
「だから言っただろう!俺の妻は強いと!刃物を取り出したとて君たちでは俺たちに勝てない」
目の前の信じられない光景に息を呑む男たちを他所に、再びが自分たちの上を飛び越え……音もなく杏寿郎の隣りに降り立った。
「もう私たちをそっとしておいて下さい。楽しかった気分をこれ以上削がないで」