第7章 ※ 第25章 決戦と喪失 1812~1813ページ
飛び出そうと足を僅かに動かしただけなのに、杏寿郎はが何をしようとしているのかを察知してしまった。
しかも聞きようによっては独占欲とも取れる言葉を紡いだので、こんな状況にも関わらずの顔に血液が一気に上り顔を両手で隠す事態に陥った。
それを視界の端に映した杏寿郎の顔からは怒りが綺麗さっぱり吹き飛び、僅かに笑みをたたえるまでに至る。
「君は本当にいつでも愛らしいな。さて、俺はこれから家に帰って妻を存分に愛でなくてはならない!もう邪な考えを持って後をつけないで貰えると助かる!既に夫婦であるが、人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られてなんとやら……と言うくらいだ。追ってくるならばそれ相応の覚悟をして追ってくるように!帰るぞ、!」
顔を隠し固まるを抱え上げ、ポカンと2人の様子を見る男たちなど見えないと言うように……実際眼中にないのだろう、杏寿郎は意気揚々と機嫌良く夜道を歩いて行く。
「えぇ……何だあいつら。惚気けて去って行きやがったぞ」
もちろん男の呟きなど杏寿郎の耳には入らない。
今は言葉一つで顔を赤くするを愛でることで頭が満たされているから。