第6章 第26章 月と太陽 1873ページより
居間に2人が足を踏み入れても変な空気は流れておらず、どうやら今回は天元に聞かれる事態は免れたようだった。
その代わりと言っては何だが、と杏寿郎をなぜか期待の籠ったキラキラした目で迎え入れられ、2人は首を傾げながら顔を見合せた。
「どうしたんだ?宇髄になにか吹き込まれたか?」
「吹き込むって何だよ?!いやな、2人の呼吸を使った技すげぇ綺麗だって教えてやったら、こいつら派手に興味持っちまったんだ!特に奥義は姫さんですら俺を追い詰めたって言やぁ……そりゃもう興味津々って訳よ!」
呼吸の技は鬼を倒すためのものなので門下生に教えるつもりはない。
鬼のいない世界で刀を振るう必要はなく、炎の呼吸然り紫炎の呼吸然り体得する必要性がないからだ。
「……君たちに指導するのは剣術だぞ?呼吸の技は」
「いえ!簡単に体得できるものではないと槇寿郎さんから事前に言われていますので!ただ、明日で構わないので師範と師範代の奥義を見せてもらいたいなって思ったんです!」
1人の門下生の言葉に全員が頷き、再度2人は顔を見合せた後……笑顔で頷き合った。
「構いませんよ。では明日は半刻ほど早くこちらへいらして下さい。お稽古の時間を削る訳には参りませんし、今日明日と帰りが遅くなってはご両親も心配されると思いますので」