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君想う

第2章 わかばが萌える


実弥の足は無意識にちひろのアパートへと向かっていた

「...俺なんでここ来てんだよ」

頭を掻きながらさっき功が言っていたことを思い出す

「俺が何年我慢してきたと思ってんだァ。くそッ」

コンコン
アパートの一室をノックする

「...はい?」
「俺だ」
「実弥?」

小さく開いた玄関からさっきまでと同じ姿のちひろがそこにいた
ただ違ったのは目元が薄らと赤い
それに実弥は気付いてしまった

「大丈夫か?」
「え、なんでもないよ!大丈夫!」
「...なら、いい」

じゃぁな、と帰ろうとする実弥を無意識に引き止める手

「ん?」
「あ、ごめ、...おはぎ、あるから食べてかない?」
「おまえ...俺を何だと思ってんだよ...」
「おはぎ好きのおっさん」
「このやろッ!」

ちひろの頭をぐしゃぐしゃっと掻き乱す実弥は「おはぎが呼んでるなら仕方ねぇ」と部屋に入った

「ふふ、なによ。おはぎが呼んでるって」
「笑うなァ」

自分で言っておきながら恥ずかしそうに顔を染める実弥は小さな1DKの部屋と進んでソファに座った

「はい、お母さんが作ったおはぎ」
「お!おばさんのか!そりゃうめぇだろうな!」

目を輝かせた実弥はパクリと大きな一口でおはぎにかぶりつく

「うめぇ」
「それはよかった」

暫く沈黙が続く

「あの」「なぁ」

2人の声が揃う
不思議と笑顔になる2人

「なになに?実弥からいいよ」
「いや、俺のは別に大した事ねぇよ」
「さっき、功くんにキス、されたの」
「ぁあ」
「驚かないの?」

特に反応がないのでちひろは実弥の様子が気になりソファから降りて下から覗き込む

「あいつが戻ってきてわざわざ言ってきた」
「そぉ...なんだ」
「それで?」
「キスされてやっぱり私功くんとは恋人にはなれないって思ったの」

黙って頷く実弥

「好きな人とするキスとはやっぱり違う。実弥はどう思う?」
「俺は...本当に好きになったやつとしたことねぇからわかんねぇよ」
「え?でも彼女いたじゃない」
「告られたから付き合っただけだよ」
「好きじゃなかったの?」
「頑張って好きになろうとしたけど、無理だった」
「そぉ、なんだ」
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