第1章 本編
「改めておめでとう、トラファルガーくん」
「さんきゅ」
再び合わさるグラスは先ほどの騒げる大衆居酒屋ではなくしっぽりと飲めるバーに響く。
アラカルトも珍しいほどに豊富。
カウンターか窓ガラスに沿って設置されている席かと聞かれて迷いなく窓ガラスの方の席を選ぶ。
これから数年越しの再チャレンジをしようとしているのだ。少しでも景色の良い方がいいだろう。
幸いにもビルの上層階にあるバーで、一面ガラス張りの窓は夜景を見下ろせ、絶景だった。
ここから見える景色、綺麗だよねと席について微笑むに、お前の方が綺麗だ、と言えたらどんなに良いか。
「もうそろその名字にくん付けやめようぜ」
「あ、やっぱりやだ?」
「まぁこういうところでは特に」
「だよね。皆にも今日やめてくれって言われたの」
名前で呼び捨てで良いかな?と聞くのに頷く。目の前にいて一対一だからすぐには名前を呼んで貰えないだろうが、彼女の口から下の名前で呼ばれてみたくなった。