第1章 本編
イライラしながら迎えた仲間内の集まりに顔を出すこととなったが、目を丸くするとその背後でにやつきながら口パクで「サプラーイズ!」と宣う仲間を見て文句をのみ込んだ。
「ほら、手を振って歩き出しちゃった!」
「…あぁ」
鞄を手に歩き出す。数歩歩いたところで振り返り、ペンギンを始めとした仲間に一言「ありがとな」と呟けば、しっかりと拾った面々が「お幸せにーっ!」なんて傍迷惑な声量で叫ぶ。「どこ行くんだトラ男~!」と違う方向へと歩き出した俺に気付いたルフィが叫ぶが仲間が引っ張っていった。
足早に歩みを進め、信号で止まっていた彼女の横に立つ。人の気配で振り向いた彼女が一瞬驚いた顔をして、それから何か納得したようなそんな表情でうんうんと頷いた。
「トラファルガーくんも帰るの?」
「帰るかどうかはわからねぇがあの賑やかなやつらと二次会は行かねぇ。今日はもう腹一杯だ」
「ふふ、確かに賑やかだったね~楽しかった」
マフラーに顔半分を埋めたはクスクスと笑う。上から見下ろすと意外と表情が全て見え、寒さで赤らむ頬が可愛らしい。
「お前は帰るのか?」
「ん~…まぁ寄るところもないし帰るかな」
「…」
「トラファルガーくんは愛しい人のところとかに帰る、のかなー?…なんて」
「は?」
この後どう誘ったら良いかと思考を巡らせていたというのに、予想外のワードに思考を切断されてしまった。
もう一度聞き直せば「さっき皆にお幸せにって言われてたから」と。あいつらの大きな余計な一言で要らぬ誤解を与えてしまった。
「いねぇよそんなもん」
「え、そうなの?じゃぁさっきのは…?」
「知らねぇ。あいつらの考えてる事を理解しようとしたら一日じゃ足りねぇ」
「あはは、ヒドイ言われようだね」
とりあえず恋人云々はいないことは伝わったようだ。
こんなところで弊害など勘弁してほしい。
「なぁ、この後用事ないなら違うところで飲もうぜ。飲み足りねぇし、少し腹も減った」
「…じゃぁお祝いに私のお勧めのところに案内するよ。ご飯もお酒も美味しいよ」
"お祝い"の体を取るか。俺への牽制かなんなのか、立場や行動の理由を、意識させるかのように伝えてくる。
取り敢えず二人になることは拒否されずにすみ、案内を始めるの隣に並び、夜の繁華街へと歩き出した。