第1章 本編
「飛び級って、医学生でも可能なの!?」
「可能だったみたい、キャプテンは」
「頭の良さの次元が違いすぎる…」
ならばこの冬の国家試験を受けたのか。それの合格祈願というところなのだろう。
それにしても日本で医師をするのか。そのまま海外で医学を学び活躍していくのだと勝手に思っていた。
「…卒業、祝ってくれねぇの?」
「え?」
近くで聞こえた声に振り替えればトラファルガーくんがいた。一通りグラスを合わせ終わったのだろう、混雑していた彼の前の人集りはなくなっていた。
「そうだね、おめでとうトラファルガーくん」
「ありがとう」
カチン、と軽く合わさったグラスに残っていた液体を一気に煽る。もう温くなってしまっていた。
「来てたなんて驚いた」
「私も同じ。帰国してたのもそうだし、こっちで医師免許とるのも驚いた。勝手な想像だけど、そのまま海外だと思っていたしね」
新たに配膳されたつまみを取り分けて彼に渡しながら、自分も食べる。確か彼は和食が好きだったよな。あ、それが理由か?
「やっぱり食生活は合わなかった?」
「覚えてたのか」
「今思い出したの。和食好きよね?パン中心だと辛いてしょう」
「地獄だ。外食しようにも近くにないし開いてる時間に行けねぇ。毎日米炊いて3食持参だ」
「医学部行きながら自炊とは根性あるね…」
「お陰でこの隈だ」
「それは元々」
変わらぬ会話のテンポに安心する。別れがギクシャクしたために気まずかっだが、彼はきちんと気持ちを昇華できているのだろう。軽く見ているわけではないが学生の時の想いなど一過性のものなのだ。これで良い。