第1章 本編
食事を楽しんでいれば誰かの「まだ来ないの?」という言葉が聞こえ、隣にいたイッカクに誰か来ていないのかと聞いた。
「今日のメインなんだけど、遅れるって連絡来てて…でもさっき迎えにいったペンギンから、もう着くって来てたから…」
そう聞いた所でお店のドアが開く。
特徴的な帽子がバージョンアップしているペンギンが入ってきて、続けて入ってきた男に驚き目を見開いた。
(そっか…向こうも休暇とかなのか)
いないと思っていたトラファルガーくんが、コートを脱ぎながら入店した。
おしゃれ髭に可愛らしい帽子。記憶の中の彼より男らしく端正な顔つきだが、仲間と再会した今の顔は優しく笑っている。
あぁ、相変わらずイケメンだね。
「それでは~主役が到着しましたので改めて乾杯しましょ~」
大手を振って注目を集めたシャチが皆にビールが行き渡るように指示を出す。
離れた席にいた私のもとにもビール瓶が渡され、それを周囲に注ごうとすれば、イッカクから待った、と手で止められた。
「先生はあっちです!」
「は?」
なぜに今先生呼び?
訳がわからないままイッカクに腕を引かれていると、人垣が分かれ、その先にはトラファルガーくんが座っていた。
「…」
「…久しぶり、です」
私が敬語になってしまった。というかあっちも驚いた顔しているよ。どうやらお互いが来ることを知らなかったのはお互いだけのようだ。
「先生にはみんなお酌して貰ってるからね。キャプテンが最後だよ」
先生にお酒貰うなんて感慨深いよね~と離れていくイッカク。何故置いていくの。
私のグラスとかもこちらに持ってきていたイッカクは、トラファルガーくんの隣にそれらを置いて去っていっている。私の席はここになったのだろう。
「とりあえず、どうぞ」
「…どうも」
注ぐために彼の前に膝を着き高さをあわせて瓶を向ける。
グラスをこちらに向けてくれているが、チラリと視線があったのは一瞬で、すぐに外れた。
「では、キャプテンの帰国と、飛び級卒業と試験合格を祈って~」
「「「かんぱーい」」」
あちこちでガチャガチャと合わさるグラス。トラファルガーくんの前にも何人もグラスを合わせに来て、きちんとそれに応えていく。そんな彼の横で飛び級というワードに驚き、向かいのシャチを捕まえた。