第2章 転入生
ユウをはじめ、新一年生の入学式の日から遡ること約3ヶ月ーーー
「本日から新しくこのナイトレイブンカレッジで学ぶことになった転入生を紹介します」
1年組の教室。
朝のホームルームに何時もなら有り得ないクロウリーが来たかと思えば、突然告げられた言葉に教室がざわついた。
こんな時期に転校なんておかしいッスね。
周りがどんな奴だと騒いでいる中、ラギーはその転入生が入ってくるであろう入り口を見た。
「さあ、入って来てください」
クロウリーの言葉で教室に入って来た人物を見て、更なるざわめきが起こった。
「ノクス・イルシーくんです。皆さん、仲良くしてくださいね」
クロウリーがそう言うとノクスはペコッと一礼した。
肩甲骨が隠れるほど長いプラチナブロンドの髪。
それを緩く編んで1つ結びしている。
その頭にあるのは狼にしては小さく、猫にしては少し長い獣耳。そして、髪と同じ色のフサフサした尻尾。
サッと生徒達を見渡した瞳は、晴天の空と同じ色。
背は一年生で寮長をしているハーツラビュル寮のリドル・ローズハートより若干低い。
全体的に色素が薄く、華奢な彼を見て同性でも目を奪われる程であった。
しかし、ラギーにとってそんな事はどうでも良かった。
あんな華奢なヤツが同じサバナクロー寮生ッスか!?
「おい!アイツ、サバナクローの制服着てねぇか?」
「嘘だろ!?ポムフィオーレの間違いじゃねえの?」
同じことを思っている生徒のヒソヒソ声がラギーにも聴こえる。
「丁度良かった。ブッチくんの隣が空いていますね」
「!?」
突然の名指しにラギーはビクリと耳を振るわせる。
「同じ寮ですので校内や寮、生活の説明をよろしくお願いしますね」
「………了解ッス」
クロウリーがノクスに何か話すとコクッと頷き、ラギーの隣に来て着席した。
「よろしく」
「……こちらこそよろしくッス」
ニコッと笑いながら挨拶するノクスに、ラギーは笑顔で応じる。
が、
やっぱり、後少しで学年が変わるってのにわざわざこんな時期に転校してくるなんて怪しいッスね……
挨拶を済ませ、前を向いたノクスの横顔を見ながら警戒することを忘れなかった。