第7章 暗殺者の上手な別れ方【中編】
何が怖いのかもわからない。
何に怯えてるのすらわからない。
だけど。
止まらない。
身体の震えが止まらない。
涙が、止まらない。
教授が奥を抉るたびに削られていく意識。
わかってる。
頼る術を知らない。
慰めることも、慰められることにも慣れてないあたしたち。
これしか知らない。
ぬくもりを分け合うしか、知らないの。
「は…………っ、ぁああ!!」
限界がきても。
限界を超えても。
遠のくことのない意識(恐怖)。
この苦い涙を甘く、意味ある涙に置き換えられたら。
そう。
思うのに。
「す、き…………っ、きょーじゅ、だいすき」
「‥っ、私もです、時雨」
余裕そうに見せる、余裕のない教授の汗ばんだ表情が好き。
「いいよきょーじゅ。射精(だ)して?」
脈打ちながら爆ぜた瞬間の、恍惚とした表情が、好き。
鬼畜なくらい執拗に。
粘着に。
獲物を狙う獣みたいな表情が、好き。
「…………っ、どーしました時雨。今日はやけに、媚びてくるね」
自分でもわかる。
お腹の奥、ずっときゅんきゅん、止まらない。
「足りないの、きょーじゅ」
消して。
わけのわからない恐怖に怯えて眠るのなんて嫌。
めちゃくちゃに抱き潰してよ。
教授の腕の中で。
甘やかされながら眠りたいの。
お願い時雨を。
壊して。