第7章 暗殺者の上手な別れ方【中編】
「ぃやぁあああっ!!」
やだ。
助けて!!
死にたくない。
死にたくないよ。
助けて。
「嫌っ!!離して!助けて!!」
暗闇の中掴まれた腕から逃げようと必死で抵抗するけど。
抜けるどころかその力は強さを増して。
さらにパニックになる。
「おいって、大丈夫だから。しー、大丈夫、ここには誰もいない。誰もいないんだ」
引き寄せられるままに、頭があったかいぬくもりへと押し付けられて。
目を開ける。
「大丈夫、大丈夫」
解くように、髪の毛を撫でる大きな掌。
あったかい腕の中。
さっきまでの恐怖が、和らいでいく。
「…………だれ?」
体を離して、『彼』、が。
あたしを見た。
「あたし、何?」
無表情に見下ろす彼の視線に体が震える。
わからない。
なんにもわからない。
ここがどこで彼が誰で、あたしが、誰なのか。
全然覚えてない。
真っ暗な闇しかない頭の中、さっきとは違う恐怖が支配した。
「俺は、雨音」
「…………?」
「…………あんたの、弟だよ」
「え」
「あんたは『時雨』。ねぇ時雨、なんでここにいるの?どうして来たの?」
「え」
「…………邪魔しに来た?それとも、殺しに?」
「…………ぇ」
今。
なん、て。
あたしが。
何…………?