第2章 暗殺者の上手な愛でかた壊しかた
夢を見た。
幼い頃の夢。
あたしの最初の仕事は11歳の時。
足止めのために参加した作戦で、ひとり、殺した。
足止めするだけで良かったのに。
幼いあたしにはそんな余裕も義理もなく。
躊躇なく邪魔な見張りを、殺してしまった。
『どんな気分だ?』
『………何も、感じない』
『そうか』
『失敗?』
『いや、成功だよ時雨、良くやった』
"良くやった"
それだけがあたしの生きる価値だった。
失敗すれば生きていけない。
成功すれば明日が来る。
それだけだった。
だから。
教授に出会って、幸せだった。
何もしなくても明日がくる。
教授が、そばにいてくれる。
ご飯が美味しくて。
お風呂が暖かくて。
甘いものが、あって。
"生"が、ある。
生きていいよ、って、言われた気が、したの。
ねぇ教授。
だから。
あたし教授のためなら。
なんだって出来るよ。