第6章 トナリ
「ん。真白あま……」
「そんな訳ないでしょ!」
「真白の不安が解決するかは微妙だけど、良い手があるよ。
マーキング」
トントンと自分の左手の薬指を叩く悟。
あ!指輪!
すっかり忘れてしまっていた存在をポケットから取り出し、ケースごと悟に手渡した。
「真白が付けて」
「ん、うん」
震える手で指輪を悟の指に通していく。
なんだか凄く緊張する。
今更だけど悟指細いし綺麗だなぁ。
アクセサリーが凄く似合う。
「ぶくく、なんか凄い顔。恥ずかしい?」
「……ん」
「可愛いなぁ、おいで」
悟の腕の中に収まり、トクトクと心地良い心音に耳を傾ける。
動揺したりしてない。なんか悔しい。
いつも私ばっかり照れて、悟は平然と笑っている。
私ばかりが心を乱されている。
「ごめんね。
同じ宝石探したんだけど、どこを探してもこのサイズしか売ってなくて……」
リングの中央に収まる小さな宝石。
悟が私にプレゼントしてくれた指輪と同じ宝石だけど、大きさがかなり違う。
希少な石の為に中々見当たらなかった。
漸く見付けたお店でも、このサイズが最大だと言う。
「この宝石高かったでしょ。無理しなくて良いのに。
僕は真白に貰えるだけで嬉しいよ」
「無理してないもん。一緒が良かっただけなの」
私の声は、悟の服に飲まれて消えていく。
「……あっそ。なら良いけど」
グッと胸板に顔を押し付けられる。
聞こえて来る心音は先程よりも早く、大きかった。
悟が喜んでくれたのが嬉しくて、つい口元が緩んでしまう。
やっぱり頑張って探して良かった。
「真白、好きだよ」
「っ、私も好き……です」
「ふっ、照れてる。可愛い。
そろそろ遅いし帰ろっか、明日も仕事でしょ」
「ん、分かった」
車道側を悟が歩き、手を繋いでくれる。
悟の手から感じる指輪の硬さに少し嬉しくなる。
幸せだなぁ。
私の隣には悟が居て、悟の隣には私が居る。
そんな日常がこれから先ずっと続けば良いのに。