第10章 五条悟という男
傷が完全に癒えるまでの数日間、任務だけでなく部屋から1歩も出ることを許されなかった。
これは悟だけじゃなくて生徒達全員が口を揃えて言ったから。
動いたら絶対に無茶をするかららしいけど、流石にすぐ無茶はしない。
なんだか信用ないなぁ。
「復帰だ!やっと身体動かせる!」
日数にするとたった数日だけど、実際にはもっと長く感じた。
自分はジッとしていて他の人を動かせるなんて状況が苦痛で堪らなかった。
今日からやっと自分で自分の任務がこなせる。
こんなに任務がなかった期間は初めてで、身体が思うように動かなかったらどうしようと少し不安が残る。
「復帰って言ったって病み上がりなんだからぜーったい無茶しちゃダメだよ!」
「分かってるよ!」
今日起きてから何度も何度も同じことを言う悟。
心配してくれるのは分かるけど、流石にもう耳タコだ。
犯人探しの方は進捗がないのか私になんの情報も来ない。
悟のことだから最後まで追求するんだろうけど。
「じゃ、行って来ます!」
「やっぱり僕も行く」
「何言ってるの、悟は自分の任務があるでしょ?」
「伊地知にズラさせる」
「また伊地知くんに迷惑掛けようとする」
「じゃあせめて悠二か恵連れて来なさい」
「生徒を巻き込む訳にはいかないでしょ!
学生の本分は学業なの」
「ちぇー」
こんな感じで朝からずっと駄々を捏ねている。
いい加減、ちょっと面倒くさい。
私はもう万全の状態だし通常任務ぐらい問題なくこなせる。
その上今日の付き添いは桜井さんだ、何をそんなに心配することがあるのか。
「悟は何が心配なの?やっぱり私が弱いから?」
今回の1件で降格こそ間逃れたものの、次はないと上から釘を刺されている。
特級呪術師がただの一般人に負けてはいけない。
呪術師の信用に関わるからだ。
「……だーから何回も言ってるでしょ、真白は弱くないんだって。
僕が真白と一緒に居たいだけなの」
「私だってそりゃ一緒に居たいけど、でも任務……」
「ちょっとだけ充電」
腕を引かれて、スッポリ収まるのは悟の腕の中。
トクトクと規則正しく脈が鳴り、温もりを感じる。
……寂しいのは私も一緒なんだってば、ばか。