第1章 もう1人の最強
「あ、そうだ。真白、明日の任務よろしくねー」
「ん?明日?」
「そ。あ、し、た」
「私明日オフだけど?」
「あれ、言ってなかったっけ?
僕の代わりに悠二の引率、流石に1人で行かせる訳にはいかないし」
「聞いてない」
「じゃあ言ってなかったかも!」
休日出勤。
まぁこの仕事柄珍しいことじゃないけど、それでも好きでやりたいとは思わない。
貴重な休みの日ぐらい、自分の好きなようにのんびり過ごしたい。
「なんかごめんな、辻咲先生。
俺が1人で動けたら良かったんだけど」
「例え1級術師だったとしても経験の少ない生徒を1人で放り出せないよ。
今は少しでも経験を積んだ方が良いんだから、小さなことで気に病まないの。
分かった?」
「押忍!」
虎杖くんの頭を撫で、説得する。
さっきも思ったけどチクチクしてそうなのに意外と柔らかい。
「明日の任務について詳細あとでメールしとくよ」
「だからスマホないんだってば」
「んもう、面倒くさい!
もう新しいの買おう。今から買いに行こう」
「え、やだ」
「「「お疲れ様でしたー」」」
グイグイ距離を詰める悟に、釘崎ちゃんと恵が虎杖くんを引っ張って行く。
待って、置いて行かないで。
今2人にしないで。
なんて私の願いは虚しく、校門前に未だ不機嫌な悟と2人きり。
「⋯⋯真白。
いくら生徒と言っても悠二の、男の頭撫でるのは良くないんじゃない?
来た時恵にも寄りかかってたし、そんなに僕を怒らせたい?」
「なんのこと。そんなのスキンシップの内に入らないでしょ」
腕を引かれ、グイグイと裏庭を進んでいく。
今は使われていない校舎裏の倉庫の前まで歩き、動きを止めた。
「悟だってスキンシップするじゃない」
「僕は女子にはしませーん。
だって他の女の子に触ったら真白が怒るからね。
そういう真白は?僕を怒らせない為に何してるの?」
詰められた距離。
顔は唇が触れ合ってしまいそうなぐらいに近く、片手で私の腕を拘束し壁に押し付けた。
小さな痛みが背中に走る。
「お仕置きが必要なみたいだね」
目隠しを外し、真っ直ぐ私の目を見つめる。
いつもそう。
この目には嘘が付けない。
すぐに見抜かれて、怒られる。