第8章 過保護じゃなくて溺愛ね
「今の当主はこの僕だよ〜?黙らせるぐらい楽勝!
上も周りも堅いんだよ。
おじいちゃんが呪詛師になったからってその孫の真白が呪詛師になるとは限らない。
現に呪術師として最前線で命を張って戦ってる。
呪詛師を産んだ家系だからって真白が見下されんの意味分かんない」
特級呪術師になる前までは上層部や周りの呪詛師からの当たりもキツかった。
酷いことも沢山言われた。
特級という階級を得て、初めて私は普通の人間になれた気がした。
誰からも見下されない普通の人間に。
「なんでおじいちゃんのことで真白が悪く言われなきゃいけないのさ。
真白は何も悪くない。
気にする必要なんてないんだよ。
真白は真白のまま、僕の隣で笑っていてくれたら良い。
家がどうとかそういうので惚れた訳じゃないからね」
「ありがと、悟」
「ん。どー致しまして」
悟は昔から、適当に見えて実は誰よりも深く物事を考えている時がある。
今回のこともそうだ。
私は生まれた時から、辻咲家の穢れた血が流れていると言われて来た。
その血を関係ないと言ってくれたのは悟が初めてだった。
「なんか学生の頃を思い出すなぁ」
「なんかあったっけ?」
「色々あったでしょ。
今と同じことで悩んでる時に悟が言った言葉覚えてる?
んなくだらねーことで悩んでんの?無駄じゃね?
って!あれは結構へこんだんだよ」
「そーだっけ?」
確かに今更悩んでも仕方ないことだったかもしれない。
でもものには言い方って物がある。
そんなにどストレートに言われたら、流石に傷つくでしょう。
当時は物凄く悩んでいて、初めて人に打ち明けた深刻な悩みだったのに笑って言われればそりゃ腹が立つ。
悟とした初めての大きな喧嘩だった。
「真白は昔も今も頑張り過ぎるからね。
そんなに気張り過ぎなくて、適当で良いんだよ」
「ありがとう。
あ、そういえば悟お風呂まだでしょ?ゆっくり入って来なよ。
明日も仕事だよね?」
「それ、遠回しに僕のことクサイって言ってんの〜?」
「ちが!ごめん!」
全然そんなつもりはなかったけど、そう聞こえてしまうのか。
少し言い方を考えなければ。
と、真剣に考えていると悟に笑われた。
真に受け過ぎ、と。