第8章 過保護じゃなくて溺愛ね
硝子が帰ったあともしばらく気持ち悪さが治らず、林檎やバナナなどの匂いが少ないものしか食べられなかった。
これが俗に言う悪阻なのかな?
だとしたら結構軽い方?
「真白、早く寝ちゃおう。おいで」
一緒のベッドに入り、手を広げてくれる。
悟の腕の中が1番安心する。
「お腹苦しくない?」
「ん。まだ苦しくなる程大きくなってないよ」
「辛かったらいつでも僕に言ってね」
「ありがとう、悟」
「真白明日休みでしょ?
僕ちょっとだけ仕事あるから1人にしちゃうけど大丈夫?
寂しくない?」
「大丈夫」
本音を言ってしまえば、物凄く心細い。
でもそれを口にしたらきっと悟は仕事を休んで私の傍に居てくれるだろう。
私は嬉しいけれど、それでは仕事が回らない。
悟クラスの人がポッと休むとかなり大きな穴が空いてしまうのだ。
「ウソ、顔が寂しいって言ってるよ。
すぐ片付けるからちょっとだけ待ってられる?」
「ん、頑張る」
「偉いね。じゃあ今日は早めに寝よっか」
トントンと優しく背中を叩いてくれる。
どうしよう、悟に背中叩いて貰うの好きかもしれない。
落ち着く。
*****
朝目が覚めると隣に悟は居なかった。
もう仕事行っちゃったのかなぁ……行ってらっしゃいぐらい言いたかった。
昨日は気持ち悪さで夜中に何度も目を覚ましてしまい、寝付きが良くなかった。
明け方になってようやく寝れたけど、今度は朝見送りが出来なかった。
寂しいなぁ……。
「……早く帰って来ないかなぁ」
のそのそと起き上がり、クローゼットから悟の服を2枚拝借する。
ベッドのサイドテーブルにはゼリーと苺が置いてあった。
何から何まで本当に気が利く。
至れり尽くせり状態だ。
苺を何個か口に運ぶと徐々に強くなって来る眠気。
睡眠不足とはなんだか違うような、それでいて強く抗えないもの。
起きなきゃという意思とは反対に、瞼は自然と閉じていった。