第9章 花言葉(薬さに)
「もしもし、初めまして乱ですー」
『乱さん?初めまして…あの…』
「突然ごめんね?
薬研からカノジョさんの事を聞いてて気になったんだー」
『そうなんですか…?』
(もうすぐ彼女じゃなくなるかもしれないけど…)
「聞きたい事があっていいかな?」
『はい、何でしょうか?』
「指のサイズはいくつかな?」
『……えっと…それはどういう事ですか?』
「あっ、いち兄がね、ボクたちの兄弟が…カノジョさんにペアリングを贈りたいって話があってね、参考にしたいんだー」
『私は8号ですが…ずっと身に付ける物でしたら、店員さんに詳しく聞いた方が良いかと思うんですが…』
「店員さんの意見もそれは欲しいけど、身近な女の人の方がいいじゃん?」
『……どんな指輪でも相手の方の心がこもっていれば嬉しいと思いますよ』
「ありがとう♪ 薬研に代わるね?」
「香澄、悪い…じゃあ電話切るな?」
『薬研くん…あの…』
「どうした?」
『やっぱり何でもないです…』
そう言うと電話を終えて、香澄の口からため息が漏れる…。
(言える筈ないよね…別の女の人と歩いてたかなんて…)
***
なんか香澄の様子がいつもと違う気がした。
乱にある相談をすると電話してと催促されて根負けしてしまったが…
喜んでもらいたい…待っててくれよ、香澄。
〈花屋の店先〉
香澄のイメージする花を探していた時にふと気づいた見覚えのある香りの花に目が行く…。
(香澄から薫る香りだな…
ベゴニアって何を表してるんだ…?)
「お兄さん、珍しい花に見とれてますね?
ベゴニアは対義する意味があるんですよ」
「その意味を詳しく教えくれないか?」