第9章 花言葉(薬さに)
貴方が私を好きなのは、瞞しだと思ってたの…
こんな何もない私を好きになる訳がない…
だから…薬研くんの申し出を断れなかったの…。
「俺と付き合って欲しい、駄目か?」
『えっ…私なんかで良いですか…?』
「……もっと自信持ちな?
俺が惹かれるんだ…香澄は魅力的だぜ」
『……よろしくお願いします』
最近はやっと自信を持てそうだった、薬研くんが私とずっと側に居てくれると思ったから…。
安らぎを与えて、甘えさせてくれた…。
私の心の殻を剥ぎ取ってくれた…。
幸せな日々が続くと思ってた…。
自分の気持ちに気づき始めた時…互いに仕事があり中々会えずに居た。
街中で薬研くんを見かけたけど綺麗な女の人に腕を組まれて歩いて居た姿を見てしまった…その日から気持ちはどこか沈んでいた…。
(厭きられてしまった…?
あの女の人と付き合うのかな?
私はフラれてしまうの…イヤだな…)
薬研と付き合い始めてから付けなかった香水を振りかけてしまう…ベコニアの香り…優しい香り…花言葉は片想い……。
告白される前にずっと薬研を想いながら付けていた物だからその時を思い出して涙が出そうになった…。
***
そんなある昼下がり。
いつも鳴らない筈の着信音が鳴ってドキッとする。
『もしもし、薬研くん? どうしたんですか?』
「あのさ…香澄は、花が好きか?」
『好きですよ どうしてそんな事聞くんですか? 珍しいですね』
(花よりも貴方が好き…そう言えたら楽なのにな…)
「あっ、いや何でもねぇ…忘れてくれ…
待て待て、突然だとびっくりするだろ?
すまん、乱が…兄弟が代わって欲しいとな
そのまま楽にしてくれ」
『えっえっ、あのいきなりだと困りますよ…』