第30章 いつだって突然、恋に落ちるのは(後家さに)
『ダメだ…想いが止まらない』
「香澄ちゃん重症だね
でも手強そうだけど諦める??」
『諦める気はないよ!!』
「その意気だよ、あたしで良かったら協力するし」
『持つべきものは友だね、ありがとう朱里ちゃん』
その固く結ばれた友情は、これからの序章にしか過ぎなかった。
***
それからと言うもの授業中には内容を聞き流す程度に予習をしてるから少しぐらい入って来なくても大丈夫なようにしていた。
少しでも隣の席の彼の横顔を眺めていたいから、自分の知らないところを小さな事でも何でも知りたくて仕方がなかった。
姫鶴と二人で他愛もない話をしながら声を出して笑ってる顔も、私の告白を何度も受けて困った顔も彼の事が日に日に好きになっていた。
たとえ相手にされなくても来る日も来る日も『好き』『付き合って欲しい』と何度も言い続けた。
彼が首を縦に振ることはなく「教師になるのが1番の目標で勉強以外は興味がない」とずっと断られ続けた。
こんな日がいつまでも続くと思ってたの
ずっと断れても、いつか振り向いてもらえると少しだけ期待をしてた
そう、あの日が来るまでは…。
期末テストが終わり肩の荷が降りた頃。
夏休みに入る前だから学校に登校しなくなり会えなくなる嫌だから勇気を出して告白する場面や初々しいカップル誕生が目に見えて増えてくる。
ただソレを望んでみた訳ではなく彼が教師の呼び出し受けていて、探していくのを渋った姫鶴に尋ねて思い当たる所を言って貰ったところに偶々出会してしまった。
「あの後家くんがずっと好きでした
付き合って下さい」
「ごめんね、付き合えないんだ」
「それは如月さんと付き合ってるからですか??」
「彼女じゃないよ、付き合う気もない」
香澄が物影から見ているとも知らずに会話が進んでいく。