第30章 いつだって突然、恋に落ちるのは(後家さに)
香澄は振り返って自分の席に目をやると後家兼光がもう席に座っている状態で、ゆっくりと席に近いて座ると距離感が分からないほど近くに感じるから。
「初めまして、ボクは後家兼光
キミが隣の席の如月香澄さん?」
『うん、そうだけど…初めてではなくて』
そう言いかけたところで授業が始まるチャイムの音にも教師が入ってきたドアの音にも気がついて無かった香澄の言いたい事は言えずに遮られてしまった。
授業が始まっても後家の姿を横目で追ってしまう、かなり重症だと思うけど…
彼の声が間近に聞こえる、こんな傍に居る…
教師が「代わりに授業を進めてみろ」と生徒を突然指名してたのは後家兼光で、嫌がる素振りを見せずに教壇へと歩みを進めて、教師からバトンタッチした後の授業は躓くどころかスムーズに進んでいく。
自分の知っている知識と興味を持てる面白い豆知識で聞いてる生徒も覚えやすく、なにより先生役が楽しいようで笑顔も浮かべている。
「この答えはそうだな…如月さんに答えてもらおう、分かるかな?」
急に自分の名前を呼ばれて着席してたのに思わず立ってしまっていて。
『私、やっぱり後家兼光が好きだな…』口に出すつもりはなかったのにポロッと漏らしてしまった言葉にクラスメイトの響めきで気がついた。
「えっと、ボクの事を聞いた訳じゃなくて……はぁ??えぇえぇ!?」
「嘘ぉおぉー!?如月さん密かに狙ってたのぃいぃ」
「いやぁあぁ、いきなり現実叩きつけられるなんてぇえぇ、こんな残酷な」
「これは美男美女カップルの誕生かーー!?」
「返事は??」
「あー…ボクは勉学に専念したいから応えれないな…ごめんね」後家は頬を掻きながら困った表情しながら伝えると騒ぎが大きくなって来たのを察知したのか、授業終了のチャイムが鳴り響いた。
朱里が慌てた様子で香澄のところまで駆け寄ると問い詰められて、後家に一目惚れしてた事を伝えると協力するって話になり、後家の友人である姫鶴と実はご近所さんと言う有力情報の元、朱里との二人で作戦会議は練られていった。