第30章 いつだって突然、恋に落ちるのは(後家さに)
「誰か探してるの??」
『何でもないよ』
朱里が香澄の見ている方に視線を向けても分かる筈もないけど、朱里の鋭い一言にドキドキしながら話題を変えようと頭の中で考えを巡らせる。
『ちょっとお手洗いに行ってくるね』
「もうすぐオリエンテーション始まるのに!?」
『だから1人で行ってくる、早く戻ってくるよ』
そう言って香澄は一人で教室をあとにすると、廊下を走っては行けないので早歩きで向かう。
朱里にトイレに行くと言ったけど目的は一つで、クラスと名前が貼り出されてる掲示板に "後家兼光の名前とクラス"を探しに来た。
掲示板のか行を注視して目的の名前を探す、1組から順番に漏れがないように。
そして自分のクラスを飛ばして次の隣のクラスを見ていた時、後家兼光の文字を見つけた。
嬉しさと同時に早くクラスに戻らないという焦りも出て来たので名残惜しさを残しつつ、その場を早足であとにした。
***
入学式から数日が経った頃
一般の授業と専門の授業と2つの授業が混在して一日の中で
午前は一般の授業、午後は専門の授業を
そして午前の一般の授業は隣のクラスと一緒に授業を受ける事になるが、隣のクラスの人数を合わせると教室が狭いので
2クラスの生徒は教室を移動しなければならない手間になるが、だが移動先の教室は二つの教室の壁をぶち抜いた広さなので人数的にも互いの席との間隔も余裕である。
2つの机を二列ずつに並べた席に後ろの掲示板に席順が貼られていたので、見間違いじゃないかと何度も何度もジーッとよく見て確認した、夢じゃない…それは現実で隣の席に後家兼光の文字と如月香澄の文字が並んでいた。