第8章 花言葉(くりさに)
〈ジュエリーショップ〉
「気になるデザインなど在りましたらお声かけ下さいね」
「あぁ…9号の指輪のデザインを一通り見せてくれ」
「かしこまりました、少しお待ち下さい」
対応してくれた店員が持って来た指輪を見ていて、一つの指輪に惹かれる…。
(あいつのイメージにぴったり合うな…)
「そちらは、指輪のフレーム自体が花の形になっております…付けている時には分からないので表に面してる部分はプラチナダイヤがあしらわれていて、全体的か表面だけか2つのデザインがありまして…当店のお薦めです」
「このデザインの9号の指輪を頂けないか?
ダイヤは全体的じゃなく見える方だけの部分で…」
「ありがとうございます。
ご用意して参ります。」
店員は四角い箱に大倶利が求めた指輪を間違いがないか確認をし、丁寧に収めて行く。
(……喜んでくれるだろうか…俺が選んだものなんて)
ジュエリーショップから一人出てくる大倶利。
その足取りは香澄の家へ向かっているが…不安でしかない。
何を言えばいい…そんな事を考えているとふと目に入った一軒の花屋が…
彩り並ぶ花に惹かれて立ち止まっていると声をかけられた。
「お兄さん、口下手でしたらお花達の力を借りたらどうですか?」
「なんで分かった…?」
「格好は決まってるのに浮かない顔をしてたので…」
「彼女に……プレゼントしたいんだが…」
「カランコエ…花言葉は"あなたを守る"
彼女さんは花に詳しい人ですか?
これを渡せば貴方の想いも伝わりますよ」
「……じゃあ、この花を花束で1つ」
「ありがとうございます」
店員はそう言うと手早くブーケへと変えて行く。
「きっと上手く行きますよ…お兄さんに伝える勇気を…」
出来上がった小さめなブーケを大倶利へと渡す。