第28章 ふたつの恋のシグナル(宗さにメイン)後編・その2※R18裏
「はーい、今開けますねー」
優しそうな女性の声が響き、玄関の扉が開くと出迎えてくれたのは母親で、そのまま家に入るよう催促されると居間に案内されて、居間のソファーでは父親の姿が新聞紙を広げていたのをガサガサと閉じた音がした。
「お邪魔します…」
「先生の方から私達に香澄の事で話があると伺ったんですが…」
「今日お時間を作って頂いたのは娘さんの事で…単刀直入に言います…香澄さんを僕に下さい」
突然の娘を嫁に下さい発言にびっくりしながら父は声を荒らげて言い放つ。
「………はぁ!?あんたになんかやらんよ!!まだ高校卒業間近の娘を…」
そんな父とは反対の反応で凄く冷静に宗三に向かって母は問いかけた。
「あの先生、なぜ娘の香澄なんでしょうか??」
「僕は教師です…貴方がた親御さんの代わりに教えるのが仕事で生徒にそういう感情を持った事は一度もなかったです…
彼女達の三年間は今しか感じられない、物事を感じ、物事を吸収し、その後の人生を左右する大事な時期です…
そんな大事な時期に彼女は僕だけを見つめてくれた。
入学した時からずっと…彼女はこんな僕に想いを寄せてくれてました…
強いようにみせて…本当は脆くて弱い…
そんな彼女を守りたいと…側に居たいと…そう思ったんです……」
宗三の言葉を聞き終えた母から納得した表情を浮かべて…。
「……そうですか…香澄の事をそんなに見て頂いてたんですね…私は任せていいと思いますよ…お父さん…」
「駄目だ!!俺は最後まで反対する!!」
「私の推測だと香澄からだと思いますけどね…?好きな人が居るって前から言ってましたし…」
「だぁあぁあぁ~~!!俺は何も聞かない!!」
父は耳を塞ぐポーズをしながら母の言葉をかき消すように叫んで…言葉を濁した。