第28章 ふたつの恋のシグナル(宗さにメイン)後編・その2※R18裏
須美佳は香澄の分は自分で買ってあげたいと橙色のストラップを手にしていて、
薬研は自分達の二人分の支払いを済ませて、須美佳も香澄の一人分の支払いを済ませた。
定刻通り来た電車に乗り込むと…先ほど買ったばかりのストラップをスマートフォンに付ける。
お揃いの揺れるストラップを見ながら嬉しそうに笑い合うと。
乗客も少なく申し訳ない気持ちもあるが、いつまで持つか分からない長谷部から渡されたケーキの箱を開けると、
捨てやすいように紙皿とプラスチックのフォークが一緒に入っていて、
小さなサイズのクリスマスケーキ、真ん中には"Merry Christmas"とチョコソースで書かれていて、ケーキの味はアールグレイで大人っぽい、甘さも控えめで食べやすかった。
***
香澄が目覚めると、そこは絵の合宿をしていた宗三の別荘じゃなく何処かホテルの一室で。
ぼんやりとした意識の中で、デジタル時計に目をやると"12月25日夕方17時頃"と表示されていた。
サイドテーブルには置き手紙があって
"寝てる間に勝手な事をしてすみません
目が覚めたら、自由に使って過ごして
落ち着いたら家に帰って下さい、送れなくてすみません 宗三"
何か夢…見てたのかな…?
頭をすっきりさせたくて、お風呂場に行くと服を脱ぎ裸になった。
そこには立派な全身鏡があって、そのミラー越しに映った自分自身の身体に無数に残された"赤い証(キスマーク)"の多さに
胸を締め付けるような、甘い時間と夢じゃなかったという実感がジワジワと沸き上がってきて。
その場でうずくまり、しばらく動く事が出来なかった。
やっぱり宗三が好き…
なんで居ないの…??
あたしはなんでここに一人ぼっちなの…??
…教えてよ、宗三…
あたしの意識が遠ざかる前に
最後になんて言ったのか…
答え合わせさせてよ…
一番短い休みの冬休みが、凄く長く感じた冬休みで。
休みなんて早く終わって学校に行きたいと初めて思ったの…。