第26章 ミラー越しの君に恋をする(燭さに)
「そんな事言ってもさ……それしか言う事が出来なかったんだよ…」
「……見掛けによらずヘタレだよな、こんなところでウジウジしても仕方ないだろ…?
それともヘアーアレンジ辞めるか??」
「彼女の笑顔が見たい…だから辞めるなんてしない…そんな格好悪いことは…出来ない……」
「そうだな…そう言うと思ったよ…
"当たって砕けろ精神"で全部出し切れ…そしたらまた付き合ってやるから…騒がなければな…」
僕の記憶はそこで途切れた…。
どこに吐き出していいか分からない感情を吐き出せて楽になった…。
長谷部くんのおかげだな…やっぱり彼には色々助けられてるな…。
長谷部くんの彼女さんにもカット練習に付き合って貰ったり…今度お礼をさせてもらいたいな…。
***
もう5月の始まり…予定の挙式まであと1ヶ月と迫ったところだ。
髪のカウンセリングも終わったが…ヘアーアレンジが中々上手く行かずにいた…。
失敗なんて出来ない…一生に一度の事だから、彼女の笑顔の為に…僕は笑顔で見送れるかな…。
ただ美容室で一人…黙々とウェディングに向けてヘアーアレンジを練習する…。
すると…ドアノブにcloseの看板を掛けていた筈の美容室のアンティーク基調の木製の扉が開き…。
「……僕の手違いですみません、まだ開いていないんです…」そう言いながら後ろを振り返ると…目の前には"震災の時に見せた悲痛な表情を浮かべてる彼女"が立って居て…。
『……すみません、今お時間大丈夫ですか…??』
「大丈夫ですけど…どうしました??
ヘアーアレンジの変更とかですか…?」
『いいえ…あの、挙式中止するんで…予約をキャンセルしに来たんです……』
「えっ……!?それはなんでですか…?」
『……それは、その……』
「あっ、ちょっと待って下さい…座れるところでゆっくりと話して頂けませんか…??」そう言って美容室の出入り口の鍵を閉めて、カラーリングするお客様に提供する飲み物も拝借し、スタッフの休憩室を借りることにした…。