第26章 ミラー越しの君に恋をする(燭さに)
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僕は彼女が居なくなった宮城で三年間を過ごし、専門学校も高校も無事卒業して美容師の免許も取れた。
そのあとアルバイトして貯金をし始めてから二年が経って…僕は20歳になり成人式を宮城で迎えた。
16歳の震災の時は子供だと思ってたが大人になれたとやっと実感した…
自分の力でちゃんと働いて…お金を稼いでる…。
この成人式が終わったらすぐに宮城を出る…
そして君を追いかける…上京する事を決意した。
ただ何処で勤めているか、住んでいるのかも分からない状態…。
でも君に会える気がしたんだ…。
東京の美容室でアシスタントして就職をした。
成田オーナーと橘店長には事情を話した。
最初は笑いながらだったけど僕の真剣さに"本気で初恋の女性を追いかけてきて、モデル以外のカットをしない…一番最初のカットは彼女だけだ"と打ち明けたら、名札は店長の名字を借りることになり…伊達眼鏡をかけて冴えないフリを装う…下っ端のアシスタント扱いでちょうど良かった…。
自分の容姿で迷惑をかけてた自覚はあったから…学生の時からね…(苦笑)
その美容室の近くで物件を借りた。
単身者向きで必要な家具は備え付けになっていて楽だったから。
働き始めて2ヶ月が経った…
それは別れも出会いも巡り合わせを呼ぶ三月…待ち望んでいた時が訪れた…。
美容室のアンティーク基調の木製の扉が開くと…目の前には"初めて会った時とは変わらない綺麗な髪を靡かせた君"が居て…、思わず声を掛けようとした…。
でもそのすぐ後ろから"震災の時に見かけた男性"が立っていた。
仲睦まじく来店した姿をみて…嫌な予感が確信に変わる。
『あの……ここってウェディングのヘアーアレンジもしてくれるって聞いたんですが…』
「あー…担当だった美容師が辞めてしまって今は休止中なんですが…」
『……そうですか、残念だけど他を探そうかな…』
店長のその言葉を聞いて残念そうな顔をして立ち去ろうとする君を僕が逃がす訳もなくて…。