第25章 ふたつの恋のシグナル(薬さにメイン)後編・その1※R18裏
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『左文字先生、水彩画描き終わった』
そう言うと香澄は水彩画を描き終えたスケッチブックをイーゼルスタンドへ立て掛ける。
その様子を見ていた宗三は香澄の元まで歩み寄り、スケッチブックを覗き込むと…。
「これまで描いたのを色々見てましたけど、今までの水彩画の中で一番良い出来じゃないですか…」
『そう言われると嬉しいな…
いつもと違うのはやっぱりモデルが左文字先生だったから嫌な水彩画が少し好きになれそうだよ』
んーっと腕を天に向かって伸ばしながら気を張っていたのを緩めた。
「あとは油絵だけですね…僕の予想通りに進んでますね」
『左文字先生…油絵の時のポージング変えて欲しいって言ったら怒る…??』
「はぁ…どんなポーズかにもよります…」
『正面じゃなくて横向きが描きたいと思ったんだけど…ダメかな…??』
「貴方がそんな事言うなんて珍しいですね…」
『色々試してみたくなっちゃって…』
「いいですよ…試してみて下さい…
もう終わりの時間ですから午後からですね」
終わる時間が迫まってる事をやはり宗三の一言で気づいた香澄は水彩画の道具を片付け始めて午後からの油絵の道具の準備だけ済ませると二人でアトリエを後にした。
廊下に出ると向かいの廊下から一人で歩いている須美佳に声を掛けた。
『あっ、須美佳ちゃんー終わったところ??』
「うん、終わったところだよ」
『でも後輩くんは?なんで居ないの??』
「……ちょっと私が油絵描くの手間取ってたら薬研くんが協力してくれたんだけど…」
『…うん、それで??』
「このままだと左文字先生にからかわれそうだから嫌だって言ってて…先に戻ってて言われたの…」
「まぁ…その判断は間違ってはないですね…」
少し含み笑いを浮かべて宗三はそう言うと驚いた須美佳は言葉を漏らした。