第24章 ふたつの恋のシグナル・中編(宗さに・薬さに)R18
「…そのまま壁に居ててくれ、俺が先にリンクに立つから」
「はい…」
薬研はそう言うと一人リンクの上に立つと足元を八の字にして動かないようにして須美佳に向かい手を伸ばしている。
「ゆっくりでいいから来れるか??」
「……あっ、頑張ります」
震える足で薬研の方へ向かう須美佳はやっとの思いで手を掴むと…その須美佳の身体を自分の元へ引き寄せる薬研。
「秦先輩、その足元だと踏ん張れないから俺と同じ八の字に出来るか?」
「……こうですか??」
薬研に言われた通りハの字にすると須美佳の身体はリンクの上で止まった。
「そうそう、それで止まれるから覚えておいてな」
「はい…こうやってリンクの上で立てるの初めてです」
「そっか…じゃあ滑ってみたいか?」
「…少し怖いですけど、薬研くんが居るなら大丈夫かと思いまして…やってみたいです」
「なら手伝うぜ、俺は後ろ向きでも滑れるからゆっくりハの字から外に向かって足を動かせるか??」
「……こうですか??」
薬研の言葉にゆっくりと八の字にした足元を外側へスィーっと向けてみると須美佳の身体は動き出す。
「その調子で大丈夫…」
「……えっ…??……ひゃあ!?」
薬研の言葉に安心した瞬間、須美佳の身体は進行方向の薬研の居る方ではなく逆の方に身体を引っ張られてバランスを崩し…薬研は須美佳の身体を引き寄せて後ろに倒れ込む防ぎ、薬研の身体はリンクの冷たさが伝わるが自身の上に須美佳の身体がある重さで確認できて安心した。
「秦先輩…大丈夫か??」
「私は大丈夫ですけど、薬研くんは冷たいですよね…すぐ退きます」
「でも一人じゃ立てないだろ??
そのまま退くと冷たいだろうし…」
馬乗り状態になっている事に少しパニック気味な須美佳は少し涙目になっていて落ち着かせようと薬研は須美佳の頭を撫でようとするがその騒ぎを見ていた香澄が慌てて来た。