第24章 ふたつの恋のシグナル・中編(宗さに・薬さに)R18
「薬研くん、ありがとうございます
時間ギリギリでしたけどいつもより描けた気がします」
「そいつは良かった…モデルになった甲斐があるぜ」
筆やパレットの片付けを済ませるとスケッチブックを仕舞いアトリエを出ると施錠する。
廊下で香澄と宗三に会えるかと思えたが会えずに居間へと戻り二人の帰りを待った。
17時ごろにキッチンへ向かうとカウンターには人数分の食事がお盆の上に置かれていて居間のテーブルに運ぶ。
[献立:照り焼きチキン・ポテトサラダ・玉子スープ・ご飯]を食べ始める。
「左文字先生、小夜くんは一緒に食べないのですか??」
「お小夜はちょっと彼のところに行ってますよ…秦さんのおかげでやる気が出てきたみたいで…でも意外ですよね、苦手な教科があるなんて…」
「私が教えれなかったやつですね…すみません…最後まで責任が取れなくて…」
『須美佳ちゃんの苦手な教科はあたしが得意なんだけど…教える暇なさそうだったからね』
「…そうですね、貴方は絵に集中してもらわないと駄目ですね」
18時30分ごろ…アトリエへ向かう宗三と香澄を見送る。
水彩画を終えてる須美佳と薬研はアトリエへ向かう事なく、居間で話をしていた。
「薬研くん、勉強しますか??」
「あぁ…まだ残ってるな」
「やっぱり勉強するの嫌ですか??
小夜くんと教えてた時に分かりにくかったですか…??」
「秦先輩のせいじゃなくて…ただ」
「……ただ??」
「思ったより難しくて悩んでただけなんだ」
(お小夜に嫉妬してたって情けなさ過ぎるだろ)
「…その箇所教えて頂けますか??
薬研くんが分かるまで私が教えたいんです」
「……ここなんだけどな、昨日教えてもらってるところで悪いけど…行き詰まってな」
「確かにここは一度説明しただけじゃ分かりにくかったですよね…すみません…ゆっくり教えるので分からない時点で声を掛けてもらってもいいですか??」
「あぁ、分かった…」
この真っ直ぐな瞳が…俺だけに向いてて欲しい
テーブルに広げられた課題に隣同士で座る近い距離に…
ただ勉強するだけの嫌な時間じゃなく、少しだけ時間の流れがゆっくり感じたのは…二人だけの時間が欲しかったからだろうな。