第24章 ふたつの恋のシグナル・中編(宗さに・薬さに)R18
後ろから見られる視線に慣れてなくて、イーゼルスタンドにスケッチブックを立て掛けて宗三に椅子を譲ろうとすると…。
「このままで大丈夫ですよ…座っていて下さい」
……左文字先生が近い
あたしの心臓音が聞こえたりしないか不安になる…落ち着け……あたし……。
『…どうかな??』
「いつもよりよく描けてると思いますよ」
『本当に!?良かった……』
「いつもこれぐらい頑張ってくれるといいんですけどね…」
『左文字先生……明日の水彩画、やっぱり不安しかないんだけど…何かアドバイスってないかな??』
「アドバイスですか……??
そうですね…貴方が油絵を得意にしているのであまり言わないようにしたんですが…水彩画を表すのは細かいところを繊細に描くのが求められるんですよ…
秦さんが水彩画を描くのが得意なのは多分無意識だと思いますけどそこを上手く描けてるんですよね、油絵は誤魔化しが水彩画よりはしやすいので得意なのは分かりますけど…不得意なままにして置くのは勿体ないですよ…
貴方はそれが出来ない訳じゃないんですから実際に"目のタッチ"は今までで一番良いです」
『…本当…やれば出来るかな…??』
「僕は出来る事しか言いませんよ
貴方を出来るようにするのが今回の目的でもあるんですから…」
『ありがとう…左文字先生
応えれるようにあたし頑張るから』
「でも今日はもう時間切れですね…少し過ぎてますけど」
『……描かないからもう少しだけアドバイスだけ貰いたいんだけど…ダメかな…??』
「じゃあ僕は服を着てくるので少し待ってて下さい」
『…うん、でも左文字先生が疲れたと思ったらすぐに言ってね
あたしのワガママだし、明日でも』
「…じゃあ時間を予め決めて置きましょうか…30分ぐらいですかね?」
それから宗三のアドバイスを受けながら30分ほど会話したあと、ふと時計を見ると21時30分と表示されていて香澄は結構な時間を引き止めていた事を初めて知った…宗三の言う集中力の凄さとはこの事なんだろう。
宗三と香澄はアトリエから居間へ行くとそこに須美佳と薬研の姿はなく…寝室に向かい寝る支度をするのだった。