第23章 ふたつの恋のシグナル・前編(宗さに・薬さに)
最初は「気のせいか…」と思ったがやはりその葉っぱの揺れが見間違えではなく確証に変わると…大木に歩み寄り…ノックするようにコツコツと軽く叩く。
「こんなところに居てたら見つけられないはずだぜ…」
「えっ??薬研くんどうしたんですか??」
「……見つかった」
須美佳が声に気がつき、見上げると男の子が顔をひょっこり出していた。
「…ひゃあぁあぁ!?」
驚いた須美佳はスケッチブックを地面に落とし立ち上がり薬研にしがみつく。
「秦先輩!?
驚かせてすまん…探してた宗三の弟だ」
大木から顔以外の身体を出してクルンと反転させて着地すると…。
「……僕は、小夜」
「薬研くん…驚いちゃいまして…とっさにごめんなさい」
薬研から慌てて離れると落としたスケッチブックを拾う須美佳。
「あの小夜くん…お茶もお菓子も美味しかったです
そのお礼じゃないですけど薬研くんと一緒に勉強教えましょうか??」
「だってさ、その方が宗三にもガミガミ言われないんじゃないか??」
「……じゃあ言葉に甘えさせて」
須美佳のスケッチが終わるのを待って居ると、スケッチブックを閉じて庭をあとに居間へ戻り、食事の終えたお皿は綺麗に片付けされていて、宗三が言っていた特別課題がテーブルに置かれていた。
小夜と薬研はその課題の問題を解いて行くのを終わるまで横で待っている須美佳。
先に終わったのは小夜の方で解答用紙を見ながらうーんって悩む表情をしていた。
「小夜くん、この辺りの問題は分かりますか??」
「……わからない」
「そうですか…じゃあここまでちゃんと解けてるので、分からない部分はこうすれば分かりますか??」
「………わかった、こうかな…?」
「正解です!!じゃあこっちも今と同じように解けるようになりますよ」
そう言うと課題で躓いていたところを参考にしながら小夜は次の問題に取りかかる。
その様子を見ていた薬研に気がつき、声を掛けた。
「薬研くんは出来ましたか??」
「……あぁ、今終わったところだぜ」
なんだ…お小夜と秦先輩のやり取りをみてると胸がモヤモヤするな…。