第23章 ふたつの恋のシグナル・前編(宗さに・薬さに)
「荷解きがあると思うので僕は待ってますね
薬研と僕は左側の奥の部屋です」
「俺は分かるから行って来るぜ」
薬研は来たところを一人戻って行く。
香澄は奥の部屋へ入って行き、宗三は須美佳と二人きりになったのを確認すると…須美佳に折り目の入ったメモを渡す、人差し指を立ててシーとポーズをしたあとに須美佳を部屋に入るように催促をした。
須美佳が部屋の中へ入り、メモ紙を開いてみるとこう記されていた。
"これは秦さんだけに見て貰いたいので如月さんと薬研には内緒でお願いします。
薬研へのクリスマスプレゼントを渡すのはアトリエの方が良いと思いますので、そのクリスマスプレゼントを僕に預けてくれませんか??
アトリエのクローゼットに隠して置きます…
プレゼントを渡す時の衣装も用意してますので、着るか着ないかは任せますが…。
あと横にそのプレゼントを渡し終えてから薬研宛の手紙と掌ぐらいの巾着の包みを渡して貰えると助かります。"
えっ…!?私がクリスマスプレゼントを薬研くんに渡すつもりで居たのは香澄ちゃんも薬研くんにも言ってないのに左文字先生に分かっちゃったんだろう…
数秒…思考を巡らせたあとに旅行バッグに入れた薬研のプレゼントを取り出し、紙袋へ入れて…部屋から少し顔を出すと…そこには待っていると宣言した宗三が居て…最大限の小声で話かけた。
「こんな事頼んでもいいんでしょうか……??」
「僕に任せてもらえると後々良いことが起こると思ってもらえると…」
「じゃあよろしくお願いします」
須美佳から紙袋を受け取ると、部屋のドアを閉めて荷解きの準備をしようとするが…ドアの前から会話が聞こえる。
「宗三ー、アトリエは二人に案内してやってくれよ
俺はお小夜探しに行ってくるぜ」
「どうぞ、ご自由に…」
「ってあれ??その紙袋はなんだ??」
左文字先生…まずくないかな…??
私のプレゼント…薬研くんにバレちゃう…
「あぁ…これは秦さんからお世話になりますって渡された手土産ですよ
彼女はやっぱり薬研や如月さんよりもしっかりしてますよね…」
「…そういう事か、しっかりしてるな…アトリエは秦先輩に連れて行ってもらうから大丈夫だろう
じゃあ行ってくるぜ」