第23章 ふたつの恋のシグナル・前編(宗さに・薬さに)
『ご近所さんだけど出る時は一緒にならないんだよ…
なんでだろう?不思議?』
「予定通りの電車が来ちゃうよ、早く行かないと…」
「そうだな、話は電車に乗ってからでも出来るしな」
電車の中では少し大きめの旅行バッグを持ってきた香澄と須美佳の荷物を網棚に置き、4人掛け用のボックス席で香澄と須美佳は隣同士で座り、薬研は向かい合って座り、女子よりも少なめな収納で済んだリュックを誰も来ないであろう隣の席に置く。
『ってな話が合ってね
須美佳ちゃん…どうした??』
「……zz」
「如月先輩、…秦先輩ねてるかも」
『ありゃ?本当だ…このまま寝かせてあげようか』
「なんか疲れってるぽいしな…」
香澄の肩に寄りかかり電車の揺れが心地よいのか気持ち良さそうにスヤスヤと息をたてて寝ている須美佳。
『羨ましそうにみないでよ…
あたしは須美佳ちゃん取ったりしないよ?』
「如月先輩!?俺そんな顔してた…?」
『してた、須美佳ちゃん自身は周囲の目は好意とは思ってないし気付いてないよ…
後輩くんなら安心して任せられるから応援してる』
「俺が居ない時に二人で居てもらえて変な奴が寄り付かないのは安心はしてるんで、ただ自分で秦先輩には伝えたいのでまだ黙っててもらってもいい…?」
『大丈夫、黙っておくから』
電車に揺られながら一時間ほどして、宗三に指定された駅のホームへ着き、改札を出るとロータリーには一台の車が…クラクションを鳴らされて"こっちにおいで"とリアクションをされたようで歩み寄る…運転席のフロントドアガラスが下がり宗三の姿が「乗って下さい…」その一言で車に乗り込む。
助手席には薬研が座り、後部座席には香澄と須美佳が座ると各自シートベルトをして車は発進する。
駅から離れると山道に入り、カーブや坂道を車で40分ほど走らせたあとに見えてきたのは…
母家と思われる大きな邸が1棟、ウッドデッキ調の小さな邸が左右に1棟ずつ建っていて庭の広さにも建物のデカさにも驚いていた。