第23章 ふたつの恋のシグナル・前編(宗さに・薬さに)
「利用出来るものを利用して何が悪いんですか?
ちゃんと用意しておきますから薬研の方も」
「……それ以上言わなくていい、聞くと共犯になるからな…願い事も俺はどっちでもかまわないしな」
「随分と弱気ですね…」
「…年の差1コ分…とはいえ早く大人になりたかったんだよ…
守ってやりたくてな」
「大人というのは面倒ですよ…」
「そうかぁ?俺からしたら、それでも宗三が羨ましい…」
「でもそんなに焦らなくても大人にはなれますよ
年齢じゃなく心の強さですかね、薬研にはすでに持ってると思うので…それを相手に見せる事で安心すると思いますよ」
「秦先輩はモテるからな…物静かなところがいいって、如月先輩は秦先輩と対称的で明るくてハキハキ喋るところがいいって二人揃ったら近付く奴が増えるんだよな…」
「分かってるんだったら少しは焦ってもいいんじゃないですか…」
「それは人の事は言えねぇだろ…
モデルか、筋トレ増やすかな」
「気にするのはそこですか…??
今からじゃ少し時間が足りないでしょうから鍛えに行ってきたらどうですか?」
「そうだな…少し走ってから体育館で筋トレするか…行ってくる」
そう言うと美術室から出て下駄箱に向かいグランドの方へと走り出した。
返事は早い方が待たされる立場だと不安だろうと思い、翌日の移動教室で横切る須美佳を見つけて「昼休憩にいつもところで…」と耳打ちし…須美佳は驚きながら頷き返した。
約束の昼休憩になり早めに着いた須美佳が空き教室で待っていると、少し遅れた薬研が入ってきた。
「秦先輩、モデルの件…引き受けるぜ」
「本当ですか!?
薬研くんありがとうございます
香澄ちゃんも喜んでくれると嬉しいな…」
「なにか俺に手伝える事があれば声かけてくれよな??」
「……はい、あの一つだけ薬研くんの身体周りを測らせて貰ってもいいですか??」
「へっ??そいつはなんかモデルと関係あるか??」
「私…風景画が好きでして人物画は苦手なので、実物を知れば絵を描く時に参考になるかと…当日までのイメージトレーニングしたいんです」
「あぁ、そういう事か…構わないぜ」