第23章 ふたつの恋のシグナル・前編(宗さに・薬さに)
「……あの、でもその条件が少し特殊でして」
「……どういう事だ?」
「……男の子のセミヌードだそうでして…この条件でも引き受けて下さいますか??」
「~~っ!?はぁあぁ!?」
「こんな頼み事…変ですよね??
駄目ですよね…すみません、薬研くん忘れて下さい」
「…秦先輩、返事は少し待ってくれないか?
ちょっと考えさせてくれ…」
「困らせてごめんなさい、でも薬研くんがそう仰るならお返事待ってますね」
須美佳との話を終わらせた薬研は空き教室から一人出ると少し早歩きしながら、宗三のいる美術室まで直行して少し乱暴に引き戸を開けてながら中へと入る。
宗三と薬研は住んでる場所が近く、弟の小夜の遊び相手だった薬研が小夜の兄で教師である宗三の学校に通い始めた顔見知りなのである。
「おーい宗三、居るか??」
「学校では先生ですよ」
「いやいや、そんな事よりどういうことなんだよ…
如月先輩のモデルの話なんかいつも断ってるだろうに…」
「…何ででしょうね…、あんな風にずっと頼まれてたら少し淡い期待をしてしまう自分が居たんですよ…」
「…でもそれと俺とは関係ないだろ?」
「そうですかね…?
僕よりも薬研の方が秦さんとどうにかしたいと思ってるんじゃないですか?」
「……ちょっ!?……それはずっと距離は縮めてきたつもりだが」
「もうあの子達も卒業してしまうんですよ?
なんとかしたいと思いませんか??」
「……まぁ、そうだな
だがセミヌードなんてどこで描くんだよ」
「僕の別荘がありますからそこで…薬研は何度か遊びに来た事あるでしょう?
モデルを受ける対価はモデル側にありますから、なんでもいう事を叶えるって事が条件なので…いい仲になりたいじゃないですか」
「……俺はともかく宗三がそんな事考えるなんて…如月先輩がんばったんだな」
「…生徒に手を出さなかった僕を褒めてもらいたいぐらいなんですけどね」
「モデルする日はいつからだ??」
「…12月20日~の一週間ですけど、冬休みでちょうど動きやすいかと思いまして」
「……!?クリスマス近いじゃないか」
「だから丁度いいんですよ、気を負わせずに頼みやすい事が出来るじゃないですか」
「……変な事…考えてないよな??」