第23章 ふたつの恋のシグナル・前編(宗さに・薬さに)
「……はぁ…仕方ないですけど、条件付きなら考えてもいいですよ」
『へっ???やったね!!
その条件ってなに??』
「条件は貴方以外の生徒…秦さんもセミヌードを描くことです、モデルは秦さんが選んだ方で大丈夫ですが女性は駄目ですよ。
描く期間は12月20日~の一週間で僕の別荘で描いてもらうって事が出来るのでしたら…あと絵が描き終わってからモデルになった人の願い事を一つ叶える事です」
『最後の願い事ってところが気になるけど…
分かった、じゃあ須美佳ちゃんにも声かけてみるから返事は待っててくれる??』
「いいですよ…
でもそう簡単にいくものじゃないと思いますけど…」
『うっ??なにか言った??』
「……いいえ、何もないですよ」
少しだけ目標に近づけてもらえた気がして気持ちが高まって心の中でガッツポーズした、でも左文字先生は何か歯切れ悪そうな言葉を濁してた……。
美術室から廊下に誰も居ない事を確認してから出た…万が一左文字先生に迷惑がかからないようにあたしが一方的に寄せてる片想いを装う…。
そのあたしの気持ちを唯一理解してくれてる幼なじみの須美佳を探そうと思った時に、目の前を横切るいつもの馴染み深い顔に慌てて声をかけた。
『あっ、須美佳ちゃんーちょうどいいところで会った』
「香澄ちゃん??
また左文字先生のところに行ってたの??」
『だって毎日でも行っておかないと…あたしの事に振り向いてもらえないし…』
「……それで今日も駄目だったの??」
『それが聞いて!!
左文字先生にオッケーしてもらえたの』
「良かったね」
『あっ…でも条件付きなんだ』
「どんな条件なの??」
『……すごく言いづらいんだけど、須美佳ちゃんに一生に一度のお願いしてもいい??』
「…??
でも左文字先生との約束なんだよね?私となにか関係あるの??」
『それが大有りなの…
須美佳ちゃんにもあたしと同じようにモデルを描いてっていうのが条件で…』
「……えっ!?そのモデルって…」
『前にチラッと話したけどセミヌードで描ける男の子のモデルを須美佳ちゃんにも探して欲しいんだ』
「……私には無理だよ!
モデル引き受けてくれる人なんて居ないよ!!」