第22章 ちいさな初恋と潮騒と(北谷菜さに)
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それからプールで水の恐怖心を取り除こうと何回も挑戦しても駄目で、これが海になると波打ち際まで近付こうとしても足がすくんで動けなくなってしまった私を友人が波から遠ざけ砂浜まで連れて行ってもらったぐらい酷いものだった。
そんな調子だったのでプールの授業を選択しなくても良い学校を選んで逃げていた。
約束を忘れた訳ではなくて、このまま沖縄に行っても迷惑をかけるんじゃないかという不安しかなくて…。
…会ったら助けてもらったお礼もちゃんと言いたい…幼かった私は何も言えてないはず…。
ただピンク色の長髪で笑顔を見せてくれた北谷菜切という変わった名前だった事、恩人に会いたいという気持ちだけが募っていた。
その思いとは裏腹にただ月日は過ぎていき"八年"というお互いの事を忘れてもいい時だった。
そんなある日、夏期限定"沖縄の海の家でボランティア"を募集していた。
何かキッカケを求めてた私はボランティアに応募してみたら、無事に採用される。
海の家のボランティア内容はバーベキューするスペースの予約の電話番と予約が入ったスペースの準備だった。
その海の家の忙しさは思っていたよりもハードなもので予約が入ったらテーブルに焼き用のトングや人数分の紙皿や紙コップをセッティングしたあとにバーベキューの網に木炭と着火材を準備して火を起こして、予約の人が来たらその場を離れて電話番に戻っての繰り返しだった。
ボランティアの人数が集まらなかったらしく一人でこの作業をしていると海の家を離れるチャンスがなくて、やっと纏まった空き時間が出来たところで記憶を辿りながら、ボランティアで来ている海の家とは少し離れたところの北谷菜が居る海の家を目指した。