第18章 彼のスイッチ(松さに)
授業中に実験の薬品をクラスメイトに渡されて、指示通りに加えていたら…
突然小さな破裂音と共にビーカーが割れて咄嗟に顔を庇って自分の腕でガードしたが…腕には無数の破片が飛び散っていた。
保健室で処置してもらったが…放課後に病院へ行くようにと諭されて、1人でやってるマネージャーの仕事を疎かにしたくない。
半袖シャツだけだと傷の事で心配かけさせると嫌だから夏用シルクのカーディガンで誤魔化した。
再従兄弟の篭手くんに頼まれて始めたマネージャーだったけど、やり甲斐を感じていた…。
他の子は続かない…続けられない…。
嫌がらせに耐えられなかったりする事が沢山あったんだって…人気者だからマネージャーの仕事を放り出して私物を盗む人も居たり…。
身内って事も合って信頼もされていたし、こんな事ぐらいで凹んでも居られない…。
「傷を僕に見せて……?如月さん…」
『えっと…断ります…!
練習再開しますよね?あたしはこれで…』
「……篭手切、ちょっと外れるから
僕抜きで練習してて」
『えっえっ??松井くん何で!?
なんで追いかけてくるの!!
いやぎぁあぁあ゛~~!!』
「松井せんぱい、分かりました!
香澄ねえさん、諦めた方が身の為ですよ~!!」
香澄は身の危険を感じたのか後退りしながら走り始めると…察知した松井が直ぐ様あとを追いかける。
それを見た篭手切は任せたと言わんばかり二人に聞こえるように叫んだ。
***
逃げ回っても後ろからは松井の姿が見えて諦めてはくれない。
走るのもしんどくなって来たから校舎の中へ入り、身を隠せるところを香澄は走りながら思考を巡らせる。