第25章 幻想叶は幻を見る
そう考えていると先に口を開いたのは相澤先生だった。
「…幻想、ヒーロー活動はどうだ」
「あっはい、そうですね…。一年目は勝手がわからず色々と大変でしたが、最近は慣れてきて、事務所の人と協力して上手くやっています」
そう言うと先生は少し嬉しそうな顔をした。
「そうみたいだな、最初は怪我も多いし心配していたが…よくやってる」
素直に褒められ照れていると、あることに気付く。
なんで私の怪我が多かったこと知ってるんだろう。
プロヒーローの怪我はあまり報道されない。
そんなことよりも敵(ヴィラン)や他の情報の方が重要だからだ。
だからそんなこと知ってるなんて、
私個人をネットで調べるとかしないと……
「なんで……私の怪我の事知ってるんですか、テレビとか…報道されないですよね?」
そう聞くと先生は一瞬「しまった」という顔をした。
「いや、たまたま耳にしたというか…」
そう言って俯いてしまう。
「昨日…、あんまり覚えてないですけど、電話かけてくれたんですよね、どうしてですか?」
なんで、どうしてだろう。
相澤先生はどうして私の誕生日に…電話をかけてくれたんだろうか
そう言うと先生はしばらく黙って
「…話が、したかった」
私から顔を背けてそう言った。
話がしたかったって、どうして?
だって、だって先生はあの事件から私に話しかける事なんてなかったじゃない。
卒業式の日だって、どれだけ探しても居なかった。
あの告白にも答えてくれなかった。
なのにどうして?
「…なんで、話したかったんですか」
そう聞くと先生は黙ってしまった。
相澤先生、私こそずっと会いたかった。
ずっと話したかった。
「……相澤先生、わたしもう生徒じゃないんです。それに、昨日で20歳になったんですよ」
そう言うと相澤先生はこちらを向いて
「十分わかってるよ」
とほんの少しだけ照れた顔をしていた。