第23章 緑谷出久は忘れようとする
【相澤消太side】
幻想が雄英高校を卒業し、プロヒーローとして活動を始める中、
俺は以前の日常を取り戻していた。
学校内に姿を探すことは無くなり
その代わりテレビやニュースでその姿を見る度俺は釘づけになっていた。
幻想はその整った容姿と、珍しい個性からメディアで目にする機会は少なくなかった。
それを見ては教師として嬉しい反面、
心臓を握られているような感覚があった。
「もうあれから何年も経ったんだ」
いい加減ただの思い出にしなくてはいけないのに…。
自分が情けなくなり、俺は先程より深く椅子に身を預けた。
「相澤君、この間緑谷君に会ったんだって?」
そう声をかけてきたのはオールマイトさんだった
俺はちらりとオールマイトさんの顔を見て
「…まあ、一週間ほど前ですけど」と答えた。
するとオールマイトさんはとても嬉しそうに
「緑谷君は今やテレビなんかで見ない日はないけど、卒業してからなかなか会えないんだよ。どうだった?元気だった?」
そう俺に聞いてきた。
______
一週間前、用があって緑谷の所属している事務所付近に訪れたとき
偶然にも仕事を終えた緑谷に会った。
テレビやニュースでは勇ましく闘い、人々を救う姿が報道されるが
その時あった緑谷は酷く疲れ、やつれた顔をしていた。
俺は緑谷のあまりの顔に心配して
「ヒーロー活動はそんなに激務なのか」と聞くと
「…いえ、…プロヒーローとしてやりがいは感じています。」
そう言うと少し黙って
「……ただ…、私生活で色々あって…」
そう曇った表情で言った。
俺はそれを見て踏み込むべきではないかと思ったが
緑谷が「相澤先生、時間があるならご飯でもどうですか」
というので二人で適当な飯屋に入った。
注文をして落ち着くと緑谷は話し始める。
「……僕、1年A組の時先生の教え子だった幻想さんと付き合ってたんです」