第20章 幻想叶は目を覚ます
【幻想叶side】
気が付いたとき、目を開けようとしても開けられず
自分の目の上に何か乗せられていることを理解した。
ここはどこだろう。
今何時だろう。
あの子たちは助かったのかな
あの敵(ヴィラン)はどうなったのかな。
そう考えると居ても立っても居られなくて、目に乗せられているものを外そうと左手に力を入れた。
「え…」
…動かなかった。何か手の上に置かれている?
暖かい…誰かの手…?
「起きたか」
戸惑っていると左側からそう声がした。
「邪魔だろうが目の上の器具は外せない。しばらく我慢しろ」
相澤先生の声だ。
「…は、はい」
状況を整理しようとすると、
お茶子ちゃんと梅雨ちゃんの顔が浮かんだ。
「…先生、お茶子ちゃんと梅雨ちゃんは無事なんですか?!子ども達や大人の方は…あいつはどうなったんですか?!」
そう言うと握られた手に込められた力が強くなった。
「安心しろ、蛙吹は事件の翌日に学校に復帰、麗日は二日後には復帰した。」
「子ども達も大人も、あそこでお前以外に怪我を負ったものは一人もいなかった。」
それを聞いて全身の緊張が解けていく
「…よかった」
そう言うと、相澤先生は少し間を開けてから話す
「今回の犯人は警察で調査されることになった。恐らく殺人未遂になるだろうな。」
「そうなんですね、よかった」
先生はしばらく黙ってから続けて話す。
「………あの日、俺より先に緑谷がお前を見つけていた。だが、緑谷の話によると犯人は緑谷の手を必要としない程混乱し、うずくまっていたそうだ」
そう言うと先生は握っていた手を離し、
私の頭を優しく撫でた。
「よくがんばったな」
いつになく優しい声でそう言ってくれた。
あの時みたいに、
ああ、こんなに優しい人に私は…
私は、この人に嘘をついている。
先生の記憶を改ざんしたままだ。
「……相澤先生、話さなきゃいけないことがあります。」
そう言うと
私の頭から先生の手は離れ、先生の気配は左側に戻った。
「幻想、俺も話したいことがある。」
真剣な口調でそう言われ、
私はこれから起きる事への覚悟を決めていた。