第16章 祭りに敵(ヴィラン)は潜む
怖い。
怖い、怖い。
人を殺そうとしている人間はこんなに怖いんだ。
狂ってる。
「……ふざけないでよ」
私は床に転がっていたコンクリ―トの塊を手に取って言った。
「そんな理由で……そんな理由で私の友達を傷つけていいわけないでしょ!!!!」
力任せに叫び、私はそいつの目に向かってそれを投げた。
「「ゔッアッ……痛てえッ……なにすんだてめえ!!!」」
その敵は顔を覆うと、掴んでいた梅雨ちゃんを落とした。
私はすかさず梅雨ちゃんの腕を組み、
ドアの横にいたお茶子ちゃんも一緒に倉庫の外へ飛び出した。
「…梅雨ちゃん、お茶子ちゃん!!大丈夫?!!」
あんな攻撃が足止めになるわけない…
だけど、みんなのいる方へできるだけ近くへ行けば
誰かは必ず来てくれる。
だから私が、
私がこの二人を連れて行かなくちゃ
「…二人とも返事してよ!!」
梅雨ちゃんは意識が朦朧としているし、お茶子ちゃんは呼吸が浅い
ああ、二人とも重体なんだと感じた。
やだ、二人とも死んでほしくない。
大切な友達なのに。
やだ、絶対嫌なのに。
なんで私はこんなに無力なんだろう。
「誰か…誰か来て!!!」
力が抜けて重くなった二人を引きずりながら私は叫んだ。
すると遠くから緑谷君が血相を変えてこちらに走ってくるのが見えた。
「………さん!!幻想さん!!」
緑谷君!!
「敵(ヴィラン)がいるの!!あいつが二人を…すぐに手当てしないと、
それにきっとあいつすぐ追いかけてくるから…、先生を…相澤先生呼んで!!!」
どうにか端的に状況を説明すると、
緑谷君は私からお茶子ちゃんと梅雨ちゃんを受け取った。
「わかった幻想さん、でも落ち着こう。二人は僕が運ぶよ。」
そう言うと緑谷君は
「三人とも時間になってもこないから…みんなで探してたんだ。…こんなことになってたなんて」
そう悔しそうにつぶやいた。
ああ、よかった。
緑谷君が来てくれた、これで二人を運べる
あとは先生やクラスのみんなを呼べば……
「おいおまえ、あんなんで逃げれるわけないだろ」
背後からの気味の悪い声と共に、
私の脇腹には何かが貫通していた。