第16章 祭りに敵(ヴィラン)は潜む
【幻想叶side】
時間はあっという間に過ぎ。
フラッシュバックを克服しつつある私も、昨日はよく眠れなかった。
18時、いよいよお祭りの雄英高校代表としての出し物の出番が来る。
「みんな!テンパらずに頑張ろうね!」
「おう!頑張ろうぜ!」
「緊張するー」「わかる、ちょっとドキドキするよね」
バックヤードでは各々がそわそわしながら出番を待っていた。
沢山練習した。楽しみでもあり、怖くもある。
だけど、
私はその中で、みんなの話にも入らずにあることを考えていた。
「先生の、記憶…、いつ戻したらいいんだろう…」
雄英高校の試験の日、私は相澤先生の記憶を個性で改ざんした。
その改ざんは今もまだ解けず、
先生は事件の事も入試試験の日の事もなかったことになっている。
一年以上前の記憶だから時間が経てば経つほど自身では解けなくなるんだろうな。
先生は記憶が戻ったとして、私の事どう思うんだろうか。
汚いと思うんだろうか。
あんな私を思い出して、ヒーローになることを認めてくれるんだろうか。
今の私は…弱い私を払拭するほど強くなれたのだろうか。
個性を解除したら、記憶を改ざんされたことには気づいてしまう。
いくら、理由があったとして…
きっと先生は私の事を嫌悪する。
怖い……嫌われるのが、怖い。
「………んそう、…幻想。」
何度も名前を呼ばれ、やっと自分に向けられた声だと気づく
「お前、どうしたこんなところで」
「…相澤先生」
今は、今会いたくなかった…そう考えていると先生は私に続けて
「麗日と蛙吹がいない、もうすぐ時間だ。悪いが探してくれないか」
そう言われあたりを見渡すと確かに二人はいなかった。
「わ、わかりました。すぐ探してきます」
そう言って走り出そうとすると
「まて幻想」
そう名前を呼ばれ振り返ると、先生はとても真剣な顔をしていた。